★あれは旦那の友達ですか? 続編 | ペルーで事件簿2

★あれは旦那の友達ですか? 続編


前回  のつづきです…。



運転手さん、空港まで帰ろう。



僕はそういったのは、他でもない、僕をだましたやつをDenuncia(通報)するためだ。

黙っていると思ったら、大間違いだぞ。

好き勝手は、させない。



とりあえず国内線の出口でだべっている警察に声をかける。

あいつに会ったのは国際線だが、そこで警察に話しているうちに逃げられては意味がない。

あからさまにめんどくさそうな顔をされたが構わず話す。



…ということがあったんです。空港でこういう人を危険にさらす行為は許せません。


…そうか。わかったよ旦那、ちょっとこっちに来てくれ。



一人の男を紹介された。



空港の正式なオフィシャルタクシーはこの人の所属しているグリーンタクシーだ。

だから旦那もこれからはこのグリーンタクシーを…。


は?いやいやいや、話きいとったんすか?

僕は空港で危険行為が行われているのでそれを報告してるんですよ?


だからこのタクシーなら危険はないから。


じゃあそういう行為を見逃すつもりですか?

そういうやからを空港に入れてるんは警察じゃないんですか?

取り締まる気は一切ないんですか?


…うむ。そういうことなら、国際線の出口の警察に言ってくれるかな。


なんでやねん。警察は警察やろ。

向こうの警察に話ししとる間に逃げられたら意味あれへんがな!


いや、私はここを動けないんだよ。



ほんなら最初から人の話聞くなよ。

とにかくこのぼんちからは



トラブルはごめんですよ?



という事件に関して消極的なオーラがびんびんと感じられる(警察だろ)。

そして自分からトラブルを解決しようという意欲は一切ないのだ。

あきらめて国際線出口へ向かう。


すでに、さっきのアンデスカーの男の姿はない。


出口近くで別の警官を捕まえて話をする。

また一部始終を話す。



それは災難でしたな…。その男はここにいますか?



もう一度辺りを見回すが、先ほどの天然パーマ色黒の男はいない。



まあ、これからはそういう怪しいタクシーには乗らないことです。


怪しいって、空港にいるタクシーですよ。警察が許可して、空港内で営業しているタクシーでしょ。

じゃあ警察にも責任が出てくるはずですよね。


む…。まあそのタクシー運転手は停車している他のタクシーに声をかけたわけでしょ。

その時点で怪しいと思わないといけない。


そんなの客にはわからへん。

だいたいグリーンタクシーでも客引きと運転手が別れてるんやから。


…。


どうして空港の出口でそういうガラの悪いタクシー運転手を働かしてるんですか?

空港の安全を護るのが警察の仕事でしょ。


まあ何も盗まれてないわけですから…。



あくまでも何事もなかったように収めようとするぼんち警察に、僕もだんだんヒートアップして来た。


そして観客が、集まってきた。

国際線の出口の周りで客引きをしている空港公認のタクシー外車の運転手達だ。


空港にはタクシーグリーンの他に五つ公認のタクシー会社があるらしいが、

建物のすぐ前にタクシーを止められて、空港のビル内で客引きができるなど、

特権を与えられているのはグリーンタクシーだけだ。



大体おかしいじゃないか!

客は外でタクシーを拾うのが危険だとわかっていて空港内で高い金払ってタクシーを拾うのに

結局空港公認のタクシー会社に街のタクシーに乗せられたら、

全く意味がないってんだ!


そうだそうだ、旦那の言うとおりだ!



…ん?タクシー運転手、あんたら話に乗ってくるの?


気がつくと、そこら辺のタクシー運転手みんなが残さず僕の周りに固まって僕の話しを聞いている。

20人近くはいるだろうか。警察もその中に二人ほど混じっている。

観客が増えた僕はすっかり気持ちよくなってしまった。

調子に乗り始めた自分に気がつく。



  escuchameeee



安全に惜しむお金はない、そうだろアミーゴ?!



観客をすっかりアジっている自分がいる。



そうだそうだ!



あんたらもノってくるね。



ペルーの玄関、国際空港は安全じゃなきゃいけない。

あんたら運転手は街のチンピラじゃないんだ。違うか兄弟?!

あんたらがチンピラ扱いされてもいいのか?


ノォーーーー。


じゃあこういう悪徳行為を黙って見過ごしてはいけないだろ?!


そうだそうだ!


大体俺は最初はグリーンタクシーだけが空港公認のタクシーだと思ってたんだ。

でもそうじゃないことをある日他の公認タクシー会社の運転手から聞いた。

俺はそれを知ってから、あんたらグリーン以外のタクシーも使うようになったんだ。

でもみてくれ、この有様だ。

こうやってあんたらの信用は失われていくんだぞ。


そんなのはダメだ!!!



なんか言うてるうちに上の方から冷めてみている自分がいることに気がつきました。

目的が変わってきてるぞ。

そして俺は、気が済んでしまったぞ。


…アジられていた観客の中に不快な顔をして聞いているのが二人ほどいる。

さっきのやつと同じ「アンデスカー」のタクシー運転手達だ。



確かに俺たちの仲間がそれをやったのか?


ああ、胸に「アンデスカー」と書かれた札をはっきり確認した。


どんなやつだったんだ。


小太りでパーマの、色黒の男だ。顔を見ればすぐわかるさ。


ほんとに俺たちの仲間がやったって言うんなら、

交番に行ってちゃんとした形で通報をしてくれ。

そこに行けば空港で働いている全ての運転手の写真が載ったリストがある。

そのリストを見て訴えたらいい。


じゃあ、そうするよ。ケーサツさん、行きましょか。




やっとちゃんとした形で訴えができる。かなり冷めた自分に気がついてはいたが。

そうして僕は生まれて初めてペルーの交番に行くことになった。






…つづく